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ドクターインタビュー

ドクターインタビュー

患者さんに敬意を持ち、血管内脳神経外科医として専門性を追求

血管内脳神経外科 部長

血管内脳神経外科 面髙 俊介

患者さんに敬意を持ち、血管内脳神経外科医として専門性を追求

血管内脳神経外科は、身体に負担の少ないカテーテルを用いて脳血管の内側から治療する診療科です。脳神経外科と脳血管内科が連携しながら、主にくも膜下出血につながる脳動脈瘤や脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)に対する治療を行っています。

治療と研究を通して、「脳の病気を抱える患者さんの力になりたい」と話す面髙俊介医師に、患者さんへの思いと血管内脳神経外科について伺いました。

カテーテルを用いて脳の病気を内側から治療する、血管内脳神経外科

脳の病気に対する外科治療には、開頭して脳を直接手術する方法と、カテーテルで脳の内側から治療する方法があります。私たち血管内脳神経外科は、カテーテルを使って脳の病気を治す治療を専門とする診療科です。

私は2006年に東北大学医学部を卒業し、2年間の初期研修を経て、東北大学の脳神経外科に入局しました。北は青森から南は大宮までいくつもの関連病院で経験を積み、脳神経外科医としての研鑽を重ねてきました。専門医取得後は、カテーテル治療のみならず、良性腫瘍や血管障害に対する直達手術にも取り組み、専門性を高めてきました。患者さんにとってよりよい治療方針を考え、カテーテル治療をより安全に行うためには、直達手術の視点も重要です。臨床と並行して、大学院時代やアメリカ留学中には基礎研究に力を入れ、現在も臨床研究を継続しています。

専門資格としては、日本脳神経外科学会専門医のほか、脳卒中学会専門医、脳卒中の外科技術認定医、そしてカテーテル治療に関連する日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医を取得しています。

くも膜下出血のリスクがある脳動脈瘤をカテーテルで治療

血管内脳神経外科が治療している病気で最も多いのは、脳動脈瘤です。このほか、脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻は比較的めずらしい病気ですが、東北中から患者さんが集まってきます。

脳動脈瘤は、脳に栄養を送る動脈にできるコブです。脳動脈瘤は人口の約5%の人に見られる病気で、破裂すると命にかかわる「くも膜下出血」という重い病気を引き起こすため注意が必要です。脳ドックを受けると、破裂する前の未破裂の段階で発見されることもあります。私たちは、これら未破裂動脈瘤とくも膜下出血の両方を治療しています。広南病院における脳動脈瘤に対する治療法は、開頭手術とカテーテルによる方法がおよそ半々です。脳動脈瘤ができた場所や大きさ、形などから治療の安全性や確実性を考え、その患者さんに適した治療を選択しています。

脳動脈瘤に対する代表的なカテーテル治療は、コブの内側にコイルを入れて破裂しない状態にする方法です。コブの形によっては、金属の筒であるステントやバルーンで支えながらコイルを入れます。カテーテル治療の領域は日進月歩で、最近ではコイルを使わずに治せるフローダイバーターといわれる特殊なステントや、W-EBと呼ばれる細かい金属の網目でできた袋状のデバイスを動脈瘤の中に留置する方法も広まってきました。これまでは治療が難しいと考えられた動脈瘤が、より安全に治療できるようになっています。ひと口に血管内治療といっても、さまざまな選択肢の中からよりよい治療方法を患者さんごとに考える必要があります。

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脳神経外科や脳血管内科と連携して、その患者さんに適した治療を

脳動静脈奇形と硬膜動静脈瘻は、動脈と静脈が病変のためにつながってしまう病気です。動脈にかかる高い血圧が、血管壁の薄い静脈に負荷を与えて出血が起きます。治療方針を立てるのが難しく、直達手術とカテーテル治療、定位放射線治療の3つを組み合わせて治療します。カテーテル治療では、動脈と静脈がつながってしまった異常血管部分を塞栓物質を用いて詰める処置をします。定位放射線治療が必要な場合は、連携している東北大学の関連病院にある専門の施設をご紹介しています。広南病院は、これら3つの治療法を担当するそれぞれの医師が連携し、バランスの取れた治療を行える体制です。

私たち血管内脳神経外科は、脳神経外科や脳血管内科と密に連携しています。毎朝、3科で集まってカンファレンスを行っており、患者さんの治療方針を多角的な視点から考え、決定しています。例えば、脳腫瘍の外科手術の前にカテーテルで血管を詰めて、手術しやすくする術前の塞栓処置が有効なことがありますが、このような場合にも脳神経外科と十分に協議し方針を決定してから手術を行っています。また、万が一、治療に伴って合併症が起き、例えば緊急で開頭手術や血栓回収が必要な場合は、別の科の医師がすぐに駆けつけて迅速な対応ができる体制も広南病院の強みだと思います。

患者さんに敬意を持ち、丁寧な説明を心がける

外来診療は週に2日、予定手術は週に3日行っていますが、緊急の患者さんも多く、土日を含めてほぼ毎日手術を行っています。

外科医の不足が社会全体の課題となる中で、私たちの診療科も例外ではありません。しかし、外科医にとって日々手術に携われる環境は、忙しさの中にも大きな学びがある恵まれた環境です。手術件数が多いことで、短期間に技術を磨くことができます。また、チーム全体の経験値も上がり、結果として合併症の発生を抑えることにもつながります。一方で、難しい症例も集まってくるため、私たちは「最後の砦」としての覚悟を持ち、患者さんに真摯に向き合っています。広南病院は治療成績を学会発表などで発信しており、常に周りから「見られている」意識と緊張感を持って治療にあたっています。特に合併症例や難症例については、チームで振り返りを重ね、情報を共有しながら、よりよい治療につなげていくことを大切にしています。

外来では、患者さんやご家族に病状や治療のプロセス、リスクといった重要な情報を分かりやすく伝えるよう、専門用語をできるだけ使わず、わかりやすい説明を心がけています。また、患者さんやご家族の表情や雰囲気など、言葉以外のサインにも気を配っています。不安が強い場合や感情が高ぶっているような場合には、どんなに丁寧に説明しても内容がうまく伝わらないことがあるため、まずは不安をやわらげ、その気持ちに気づき、なぜそう感じているのかを理解するよう努めています

患者さんからは「この病気は治りますか」「どこに病変がありますか」といった質問をよく受けます。脳の病気は場合によっては完治が難しいため、事前の丁寧な説明が欠かせません。自覚症状が乏しい場合は、「右目の奥のあたりです」といった身近な表現で伝えることで、理解が深まります。

手術後に感謝の言葉をいただくこともありますが、本当に讃えられるべきは、不安と向き合い治療に踏み出す勇気を持った患者さん自身だと感じています

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アメリカ留学で医学研究し、広い視野を持つ

2018年に米カリフォルニア大学サンフランシスコ校に留学して2年間、動物実験による基礎研究に没頭しました。それまで動物実験の経験はほとんどなく、英語に対する苦手意識も強かったので四苦八苦の日々でしたが、留学の慣れない環境で、英語を使って仕事をするのは貴重な経験でした。アメリカでは異なる文化や考え方を持つ人が生活していて、多様性に対して寛容です。現地の人の英語力もさまざまで、私のつたない英語でも話を聞いてもらえました。伝える姿勢があれば、大抵のことは伝えることができるのです。心が通じ合えたときは、外国の人もやはり同じ人間なんだなと改めて思いました。また、このような経験によって、より広い視野で人と関われるようになりました。

留学前は脳外科医として多忙な日常を送る狭い環境で、閉塞感もありましたが、アメリカに行って自分の価値観やそれまでの努力に自信を持ち、初心に返るよい機会にもなりました。帰国後は、より前向きに仕事に取り組めるようになったと思います。

基礎研究は医学の発展に不可欠であり、臨床現場とも密接に関係しています。アメリカをはじめ世界中で今まさに進んでいる研究に関心を持ち、常にグローバルな視点で治療に取り組む姿勢が大切です。病気を科学的に診て新しい治療をよく理解し、一人ひとりの患者さんを大切に治療したいと思っています。

日々、専門性を磨いて患者さんに貢献したい

手術で患者さんが元気になるのは、私にとって1番のやりがいです。脳神経外科は修行期間がとても長い領域ですが、患者さんやご家族から感謝されると、これまでの努力や苦労が報われたと感じます。

脳神経外科をはじめ外科では手技が重要で、仕事の時間以外にもトレーニングを行います。例えば、私たちはバイパス手術のために、日頃から細い糸で早くていねいに縫う練習をします。カテーテルの練習では、血管のモデルを使ってカテーテルを進めたりコイルを入れたりする訓練をします。助手として手術に入っていると、部分的にでも手技を行う機会が得られるので、一回一回の手術を大切にして手技を身につけてきました。

外科医への道のりは長く決して平坦ではありませんでしたが、「どうしても脳神経外科医になりたい」という強い思いがあったからこそ、困難を乗り越えることができました。
技術の研鑽に終わりはありません。日々、より高い技術と知識を追求し続けています。研究活動も並行して行うことで、手術技術と学術的知見の両面から成長を図っています。そうするうちに「さらにこの分野を極めたい」という気持ちが自然と芽生え、そして何よりも、患者さんにより良い医療を届けたいという思いが、日に日に強くなっていくのです。

もちろん、ストレスがかかる仕事なので、後輩には仕事だけではなく息抜きもバランスよくするように伝えています。私は学生時代にテニスをしており、テニスやランニングで仕事を忘れる時間も大切にしています。

医学部の学生さんが、実際に脳神経外科を選ぶ理由として最も多いのがやりがいです。外科は大変だとよくいわれますが、困難を乗り越えて高みを目指すにつれて、高度な技術が身につくのを実感できます。難しい脳神経の病気を患う患者さんを、自分の手で治す達成感とやりがいは、言葉では言い尽くせません。

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臨床と研究の両面で患者さんに貢献する

血管内脳神経外科は、これからも新しい技術が進み、発展していく分野です。積極的に高度な医療技術を取り入れ、患者さんによりよい医療を提供したいと考えています。研究活動にも引き続き力を入れて、医学に貢献したいと思っています。

私はこれまで体に負担がかからない非侵襲的なMRI検査で、脳動脈瘤の血管壁を見る研究に取り組んできました。私が研究している方法によって、破裂瘤ではどの部位が破裂したか、未破裂瘤では将来破裂する危険性が高いかどうかといった、治療方針決定のために重要な情報が事前に分かる可能性があります。国内の多くの病院で行える通常の造影MRI検査によってデータが得られるため、汎用性も高く有用な研究と考えています。今後も、広南病院から世界に発信できる研究を続けられたら嬉しいです。

広南病院は新しい医療機器を取り揃え、優秀なスタッフで構成される脳神経専門の医療施設です。私たちは一人ひとりの患者さんにとって、よりよい治療を模索しながら、全力で治療にあたっています。ぜひ安心してお任せいただきたいと思います。

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